V-Ray SketchUp 屋外照明チュートリアル

このチュートリアルでは屋外での照明(昼と夜)を学びます。またVFBでの露出補正とレンズ効果も加えます。

このチュートリアルを行うには、SketchUp 2015,2016,2017 のいずれかと、V-Ray 3 for SketchUp プラグインのインストールが必要です。

V-Ray 3 for SketchUpを検討中の方は評価版をインストールしてください。製品版と評価版に機能差はありませんので、評価版でもチュートリアルの内容を行う事ができます。V-Ray評価版案内ページ

なおこのチュートリアルの様子を録画したムービーをYoutubeで見る事ができます。[英語音声]

以下よりチュートリアルで使用するSektchUpのシーンデータをダウンロードできます。
(シーンはBartomiej Ordon氏による提供です)

リンク切れの場合こちらからダウンロードしてください

お使いのブラウザによっては、アイコンを右クリック » “名前を付けてリンク先を保存”から保存すると任意の場所にZipファイルをダウンロードできるかもしれません。

シーンは Zip形式で圧縮されていますので展開してご利用ください。


SketchUpを起動し、上記からダウンロードしたシーン “QS2_st.skp” を開きます。
シーンを読み込むと以下のように見えると思います。


V-Rayをインストールすると SketchUpにV-Rayツールバーが表示されますが、その中から以下のライト作成ツールバーを使用します。


V-Rayツールバーの AssetEditor(アセットエディタ)ボタンを押して V-Rayアセットエディタウィンドウを呼び出します。


アセットエディタ上部、左から2番目のアイコンが「ライトエディタ」のタブです。こちらにシーン内に存在する全てのライトがリストされ編集する事ができます。V-Rayの初期設定では SunLight (太陽光)が必ず存在します。(SunLightは削除できません)


アセットエディタのレンダリング設定タブ(左から4番目のアイコン)を開きます。その中の Material Override(マテリアルの上書き)のスイッチを有効にしましょう。これでシーン全てのオブジェクトのマテリアルが「一時的に」グレーの初期設定マテリアルに上書きされます。テクチャーや色が除去され純粋の照明の効果だけを確認しやすくなります。


SketchUpの“レイヤ”トレイで rooffacade を不可視にします。屋根と窓部分が非表示になります。


しばらく待つと V-Rayのレンダリング画像ウィンドウ (VFBと呼ばれます)が表示され、以下の様に表示されます。

V-Rayツールバーの “Render Interactive” ボタンを押してインタラクティブ・レンダリングを開始します。


Material Override(マテリアルの上書き)のスイッチを有効化した事でシーン内全ての質感が単色カラーに統一化されている事が解ります。


V-Rayの太陽光は SkeychUpの“影”トレイで調整する事ができます。時間を朝方 10:00 くらいに変更してみましょう。レンダリングがインタラクティブに更新されます。


アセットエディタの ライトタブを開いて 右側の矢印部分をクリックします。


現在選択しているライト(SunLight)のパラメーターが表示されます。


以下のパラメーターを変更してレンダリングの違いを観察してみてください。

  • Sky Model = 空の表現方法を選択します。CIE Clarは晴れ、CIE Overcastは曇りの空になります。V-Rayの初期設定はHosek et alです。
  • Turbidity[濁り] = 大気の霞具合を調整します。
  • Size Multiplier = 太陽のサイズを調整します。この値が小さい程シャープな影を生成し、値を大きくする程、影がソフトにボヤケます。(ノート:V-Rayでは太陽からの影をぼかす = “太陽のサイズを大きくする”と覚えておいてください!)


Size Multiplier = 1, 太陽が小さく影がシャープです。


Size Multiplier = 2, 太陽が大きく影がボヤケている点に注目してください。


Sky Model を “Hosek et al”、Turbidity を “3”, Size Multiplier を “15” にセットします。


SketchUpの「影」で時間帯を午後5時(17:00) の夕方に変更してみましょう。以下のようになります。



V-RaySphereライト(球体ライト)を使って屋内を照明してみます。SketchUpでカメラを動かして2階の部屋がよく見える位置にビューポートを移動します。V-Rayツールバーの SphereLight (左から2番目)のアイコンを選択して、2階の床付近をクリックして球体ライトを作成します。(1回目のクリックで作成し、2回目のクリックで半径を決めます)


生成したライトを少し持ち上げて床から離します。また作成したライトを複製して隣の部屋に配置します。(移動中にCtrlキーを1回押します。)


アセットエディタのライトエディタを見ると、ライトを複製したにも関わらずリストされるSphereLightは1つだけである事が解ります。ライトを複製するとインスタンスとなり1つのライトとして扱われます。このライトの設定を変更すると全てのインスタンスに反映されます。


さらに2階に作成したライトを複製して、1階の窓際に3つライトの複製を作成しましょう。


さらにキッチン付近にも1つライトを複製します。


ここまで加えた照明は家の中が明るくする為のライトです。全て“複製”したライトなので、V-Rayのライトエディタで設定を一括変更できます。

SkeychUpの “Scene 3” タブをダブルクリックして初期のビューに戻ります。またこの時 roof と facade の可視性も元に戻る点に注意してください。


インタラクティブ・レンダリングすると以下のように見えると思います。


現在の所、ライトが弱いので殆ど室内を明るくしていません。またライトが丸くレンダリングに写り込んでしまっています。ライトを見えなくしてみましょう。

アセットエディタを開き、ライトエディタで “V-Ray Sphere Light” を選択します。Optionsのカテゴリにある “Invisible” のチェックを付けます。この Invisibleは「カメラから不可視」の意味で“カメラからライトが見えなくなりますが、ライトは周囲を照明する”というオプションです。

さらに“Affect Reflections”(反射に影響)のチェックを無効にします。このオプション無効にすると「反射に写り込まい」ライトになります。つまり球体のライトが反射に写り込んで見えてしまうのを防ぐ事ができます。

これで、「カメラから見えず、反射にも写り込まないが周辺を照明するライト」になります。


インタラクティブレンダリングは以下のように見える筈です。


次にライトを明るくしてみます。 Mainセクションで “Color”を少し黄色くセットします。(暖色系ライトにします)“Intensity”(強さ)を 2000 に引き上げます。


インタラクティブレンダリングは以下のように見える筈です。少し明るすぎるので“Intensity”は 1800 くらいでも良いかもしれません。



初期設定でセットされている “SunLight” は正確な太陽光と空をシミュレーションするには最適ですが、シンプルすぎると感じるかもしれません。

V-Ray Dome Lighy (ドームライト)を使用すると IBL (イメージベースライティング)と呼ばれる「写真から照明」を行う事ができます。

VFB右上の “STOP”アイコンをクリックして、一旦インタラクティブレンダリングを停止します。


V-Rayツールバー(ライト)の Dome Light アイコンを選択します。


地面付近(適当な場所でかまいません)でクリックしてドームライトを配置します。


再びインタラクティブレンダリングを開始すると、ドームライトによって環境に空のイメージが貼り付けられます。


ライトエディタで LightDome を開くと初期設定で テクスチャーマップ がセットされているを確認できます。


ドームライトの初期設定でセットされるテクスチャーは “Default Dome Light Texture.exr”というファイルです。

VFB右上の “STOP”アイコンをクリックして、一旦インタラクティブレンダリングを停止します。


VFBでではイメージを読み込み表示する事ができます。VFB上部の“Load image”ボタンを押します。


以下の場所を開きます。

Windows版\\ 
C:/Program Files/Chaos Group/V-Ray/V-Ray 3.4 for SketchUp/extension/ruby/resources/
Mac版\\ 
アプリケーション/Chaos Group/V-Ray/V-Ray 3.4 for SketchUp/extension/ruby/resources/

開くウィンドウでファイルの種類を “All supported formats” に変更すると、“Default Dome Light Texture.exr”を選択して開く事ができます。


VFBで開くと以下のように「上半分が白で下半分が黒」の横長イメージが表示されます。

VFB左下の“Show Color Correction”ボタンを押して、カラー補正ウィンドウを表示します。


カラー補正ウィンドウの “Expsure”チェック を有効化して Expsure(露出)のスライダーを下げてみましょう。空のパノラマ(360度)イメージであるのが確認できます。


“Default Dome Light Texture.exr”は「ハイダイナミックレンジ・イメージ(HDRI)」とよばれる画像で、一般的なJPEG画像は 8bit = 256 階調の明るさしか表現できませんが、HDR画像は 32bit= 4,294,967,296 階調(40億以上の階調)を表現できます。非常に微弱な明るさから強い明るさ(太陽光)を記録できるので、照明シミュレーション(イメージベースライティング)に最適な画像フォーマットです。

Tips:IBL用のHDRイメージは無償で配布されていたり、素材集として市販されています。インターネットで “HDRI 素材”等で検索して良い素材を見つけてください。無償の物としては sIBL Archive 等がオススメです。

必ず “Expsure”チェックを無効化してから、再度V-Rayツールバーの “Render Interactive” ボタンを押してインタラクティブ・レンダリングを再開します。(開始には数十秒掛かります。)




現在ドームライトで照明しているので、SunLightは余計です。ライトエディタで Sun Lightのアイコンをクリックして無効化しましょう。(SunLightパラメーター編集画面右上のスイッチでも無効化できます。)


インタラクティブレンダーが更新され、以下のようにドームライトだけの照明になります。


ドームライトは他のライトのように Intesity(強さ)パラメーターを操作する事で明るくする事ができますが、現在は 1 のまま行います。

ライトエディタで Dome Light の “Use Transform” オプションを有効化します。


SketchUpのビューポートでドームライトのアイコンを自由に回転してみてください。インタラクティブレンダーが更新され、ドームライトの向きに合わせて 空(雲)が回転するのを確認する事ができると思います。また空の向きと共にライティングも少し変化する点に注目してください。


これで基本的な昼間~夕方の照明設定は完了です。


ライティングに満足したら、インタラクティブは不要です。VFB右上の “STOP”アイコンをクリックして、一旦インタラクティブレンダリングを停止します。


最終レンダリングを行う前に少し行う事があります。アセットエディタのレンダー設定で Material Override のスイッチを無効にします。


以下図の様に別れている地面の1つを選択して V-Rayツールバーの Fur ボタンをクリックします。


もう1つの地面を選択して同じく V-Rayツールバーの Fur ボタンをクリックします。


アセットエディタの オブジェクトリストに VRayFurオブジェクトが2つ追加されているのが確認できます。これで地面に芝生が生えます。


SkeychUpの “Scene 3” タブをダブルクリックして初期のビューに戻ります。


V-Rayツールバーの Render ボタン押して最終レンダリングを完成しましょう。


最終は以下のようになると思います。



今度は完全な「夜」のシーンをレンダリングしてみます。

アセットエディタのレンダー設定で再び “Material Override” を有効化します。


オブジェクトエディタで、VRayFur オブジェクト2つを削除します。(右クリック » Delete で削除できます。後でFurを再度セットしますが、インタラクティブレンダーを早くする為に一旦削除します) 

さらにライトエディタで SunLight を有効化し、Dome Light を削除します。


インタラクティブレンダリングを開始します。次のようになると思います。


インタラクティブレンダーが更新され、以下のように「夜」の風景になります。



窓際に照明を追加してみたいと思います。 カメラを窓付近まで移動させ天井の溝の中にある棒状のオブジェクトを選択します。


選択した状態で、V-Rayツールバー(ライト)の “Mesh Light”ボタンを押してください。


“Scene 3”タブをダブルクリックしてビューを元に戻します。インタラクティブレンダーが以下のように更新されます。作成したライトの影響は殆ど見えません。


ライトエディタを開き “V-Ray Mesh Light” を編集します。Colorを家の中と同じ明るい黄色に変更し、 Intensity を 350 まで引き上げましょう。


インタラクティブレンダーが更新され、屋根の下の照明が見えるようになりました。 インタラクティブレンダーを停止しましょう。



再び2つの地面オブジェクトに Fur を割り当てます。


レンダー設定で “Material Override” を無効化し、Render Elemnts で Add Render Elementをクリックして “Denoiser” を追加します。


追加した Denoiser で Update Frequency を 5 にセットします。(これはレンダリング中のノイズ除去の頻度を指定します。)


アセットエディタでレンダリングボタンを押して最終レンダリングを実行しましょう。(Interactive は無効、Progressiveが有効です)


最終レンダリングは時間が掛かります。以下は レンダリング進行 55% 程度の所でSTOPしたイメージです。

正面窓の部分を拡大して見ると、ノイズがまだのっているのが解ります。


左上の “RGB Color”の部分をクリックしてプルダウンメニューから “Denoiser” を選択してみてください。ノイズが消えているのが解ると思います。これは Denoiser フィルタによって後処理でノイズを除去した結果です。


このように Denoiser を使用するとノイズがまだ見える段階で停止しても、クリアな結果を得る事ができます。つまりレンダリング時間をより短縮させる事ができます。 もちろんさらに計算させてからデノイズした方が、デノイズ結果ももっとクリアになります。(ノイズの非常に多い極初期の段階でデノイズするとモアレのようになります)



V-Rayにはレンダリング後のイメージの露出やカラーを補正する機能があります。

VFB左下の“Show Color Correction”ボタンを押します。


VFB左側にカラー補正ウィンドウが表示されます。Exposure [露出]や Color Balance [カラーバランス]、Curve [トーンカーブ] 等を有効化して自由に調整してみてください。この調整はオリジナル画像を壊しません。

なおV-RayではTIFFやJPEG、PNG等の8bitイメージで保存するとVFBのカラー補正が適用されて保存されます。 vrimg/OpenEXR等の32bit float形式で保存するとカラー補正の適用されないオリジナルイメージ(RAWデータ)が保存されます。このvrimge/OpenEXRを再度VFBに読み込んでカラー補正を適用する事もできます。


なお完成イメージの保存は VFB上のSaveボタンから。


もしくは、レンダリング前に Render Outputロールアウトの Save Image を有効にして保存先をセットする事でも出力できます。

RGB Color(デノイズされていない画像)を表示してVFBの LensEffects機能を有効化すると Bloom/glare 効果を加える事もできます。お試しください。 (現在 Denoiser の結果にLensEffectsを適用できませんが、次のバージョンでDenoiserとLensEffectsが同時に適用可能になります)

  • 最終更新: 2018/07/31 05:55
  • by oakcorp