PhotoShopで V-Ray Back To Beauty 合成の基本
PhotoShopにて、レンダリング画像の「反射を少し弱く/強くする」「オブジェクトの色を少し変える」というのは非常によくある作業ですね。V-Ray では、このような作業の為にレンダリングを「反射」「ライティング」「影」等の「要素」に分解して編集できる機能を提供しています。
V-Rayでは分解した「反射」「ライティング」「GI」などの要素を「レンダーエレメント」と呼びます。また、レンダラーが直接出力した最終結果(RGBデータ)を「Beauty」と呼びます。
分解した「反射」「ライティング」「GI」などのレンダーエレメントを、再度合成して最終的なレンダリング画像(RGB)に戻す合成作業を「Back To Beauty」と呼びます。
ここでは、各アプリケーションのV-Rayでレンダリングを出力し、PhotoShop上で「Back To Beauty」合成を行う工程を説明します。
3ds Max版での出力設定
レンダリング設定>レンダーエレメントタブから “VRayBackToBeauty” エレメントを追加します。 “VRayBackToBeauty” エレメントを1つ追加するだけで、「Back To Beauty」合成に必要な基本エレメントが全て生成されます。
レンダリング設定の V-Rayタブ>フレームバッファロールアウト>“V-Ray RAWイメージファイル”のチェックを有効にします。[…]を押してファイルの保存先とファイル名を指定します。フォーマットに OpenEXR (.exr) を選択します。 V-Rayレンダリングのハイダイナミックレンジを完全に維持する為に“EXR/VRST 32ビット出力”のチェックをつけてください。(チェックを付けない場合、一部のチャンネルは 16bitで出力されます)
“V-Ray RAWイメージファイル”から保存するので、3dsMax側のレンダリング出力設定は不要です。
レンダリングを実行します。指定した場所に .exr ファイルが生成されている事を確認してください。
Maya版での出力設定
レンダー設定> Render Elements タブ> “Preset: Back To Beauty”をクリックします。すると「Back To Beauty」合成に必要な基本エレメントが全て自動的に追加されます。
レンダー設定>共通タブ>Image File Output にて Image Format に “exr (multichannel)“を選択します。 V-Rayレンダリングのハイダイナミックレンジを完全に維持する為に Image format options ボタンを押して OpenEXR の Bits per channel を “32 bits (full float)“にセットします。
レンダリングを実行します。プロジェクトのImagesフォルダに .exr ファイルが生成されている事を確認してください。
CINEMA4D版での出力設定
V-Rayのレンダリング設定>基本設定タブ>”V-Rayネイティブイメージ出力” にて「V-Rayネイティブの出力システムを使用」にチェックを付けます。
フォーマットに exr を選択し、フォーマットのオプションでファイルタイプを”マルチレイヤー“にセット、さらにV-Rayレンダリングのハイダイナミックレンジを完全に維持する為に、フォーマットのオプションを開いて “32 bits(full float)“を選択します。
「V-Rayネイティブの出力システムを使用」する場合、CINEMA 4D標準の”保存”を使用する必要はありません。
V-Rayメニュー>レンダーエレメント設定 を開き、左側の Beauty の文字を掴んで、中央にドラッグ&ドロップします。すると「Back To Beauty」合成に必要な基本エレメントが全て自動的に追加されます。
レンダリングを実行します。指定した場所に .exr ファイルが生成されている事を確認してください。
SketchUp および Rhono版での出力設定
V-Rayのレンダリング設定タブ>Render Outputロールアウト>Save imagesで File Pathにファイルの保存先とファイル名をセットします。
File Typeを “exr” にセットし、Image Optionで Multichannel にチェックします。
V-Rayレンダリングのハイダイナミックレンジを完全に維持する為に Bit per channelを “32 bits” にセットします。
レンダーエレメントタブにて “Back To Beauty”エレメントを追加します。「Back To Beauty」合成に必要な基本エレメントが全て自動的に生成されます。
レンダリングを実行します。指定した場所に .exr ファイルが生成されている事を確認してください。
PhotoShop での作業
PhotoShopで、V-Rayの複数のレンダーエレメントを含んだOpenEXRを読み込むには、プラグインをインストールする必要があります。次の2種類のプラグインの何れかをダウンロードしてインストールしてください。 全て無償で配布されています。作者の方に感謝ですね。
- ProEXR https://www.fnord.com/
Zipを展開して出てくる ProEXR.8bi を
C:\Program Files\Adobe\Adobe Photoshop [バージョン]\Plug-insフォルダ 内にコピーしてPhotoShopを再起動してください。
- EXR I/O https://www.exr-io.com/
インストーラー形式なので、インストールしていただくだけです。
ProEXRでは、Altキーを押しながら .exr ファイルをPhotoShopにドラッグ&ドロップしてみてください。添付のオプションが表示されます。
ここで “Alpha appers on sepalate layers” にして “Set Deaults”ボタンを押して初期設定として保存します。(次回からこの設定が自動的に適用されます)
これで、AlphaチャンネルがRGBレイヤーの透明度ではなく Alphaレイヤーとして独立して読み込まれます。AlphaチャンネルがRGBレイヤーの透明度として適用されないので、RGBレイヤーに背景が見えるようになるでしょう。
EXR I/Oでは、Altキーを押しながらPhotoShopにEXRをドラッグ&ドロップすると、次のオプションが表示されます。
“Spilit Alpha”のオプションを有効にします。(無効な場合、アルファチャンネルがRGBチャンネルの透明部分としてセットされます)
V-Rayからの .exrファイルを読み込むと以下のようなレイヤーが生成されます。
V-Rayの “Back To Beauty”で自動生成されるエメントは次の 10のレンダーエレメントです。
- VRayLighting
- VRayGlobalIllumination
- VRayReflection
- VRayRefraction
- VRaySpecular
- VRaySSS2
- VRaySelfIlumination
- VRayCaustics
- VRayAtmosphere
- VRayBackground
基本的にこの10のエレメント全てを(加算)で合成すると、「Beauty」に戻ります。
RGB レイヤーはレンダラーの最終レンダリング結果(Beauty)です。Alphaはアルファチャンネルです。
RGBとAlphaのレイヤーを非表示にします。
残りのレイヤーを全て選択して 合成モードを「覆い焼き(リニア)- 加算」にセットしましょう。
RGB レイヤー(Beauty)と同じ結果になりましたね。
以上が基本的な レンダーエレメントからBeautyを合成する “Back To Beauty”の手順です。
主な使い方
反射の強弱をコントロールする場合は、Reflection(他のオブジェクトが反射した成分)レイヤーとSpeculerレイヤー(光源が反射した成分)を露出調整レイヤーで調整します。
オブジェクトの色は、Lightingレイヤーに色相・彩度調整レイヤーを適用して調整します。
https://www.youtube.com/watch?v=vgEkP8QZ3QY
さらに「Back To Beauty」以外の様々なエレメントを活用すると「Shaodwを薄く/濃くする」「写真にCGを合成する」「Photoshop上でライトミックス」等ができる様になります。探求してみてください。(上級者向けなのでここでは解説を省きます)